てんかん診療

てんかんとは

てんかんの診断

その他のサポート

てんかんとは

脳の神経細胞が過剰な活動をすることによる一過性の兆候または症状が「てんかん発作」で、このてんかん発作を引き続き起こすと推定できる病態が「てんかん」です。

有病率とは、ある時点における人口あたりの患者さんの数のことです。てんかんの有病率は約0.5~1%とされているので、100人いれば約1人はてんかんに罹患していることになります。決してまれな病気ではありません。

原因は様々で、脳の病気(脳卒中や頭部外傷)に伴って起こる場合もあれば、これといった異常がみつからないこともあります。乳児から思春期にかけての発病が多いですが、どの年代でも起こりうる病気です。特に高齢者は脳の病気を抱えやすいため、それとともにてんかんを発病する人も増えています。

てんかん発作

①問診

てんかん診療は、まずその症状がてんかんかどうかを診断することから始まります。ここで最も重要なのが問診です。症状の始まり方、発作中の様子と終わった後の様子、発作時の状況、その日の体調など、ご自身の自覚症状と周囲にいた人からの目撃情報も大切です。初めて発作を目撃すると気が動転してしまうことが多いですが、繰り返し発作があった場合、動画撮影ができると言葉では表現しにくい発作時の様子を伝える良い手段になります。

まず発作型が何かを診断し、次にどのてんかん類型、てんかん症候群に当てはまるかを確認します。

②脳波検査

てんかんをもつ患者さんでは、脳の電気活動の異常が脳波の異常として普段からみられやすいため、診断に役立ちます。

発作型がはっきりとしない場合、長時間ビデオ脳波モニタリング検査を行う場合があります。1日から数日間にわたって脳波検査を測定し続け、同時にビデオ撮影を行います。脳波記録と映像を同時に評価することができるため、発作がてんかん性のものか、どこに脳波異常があるかを読み取ることができます。大学病院(大分大学医学部附属病院)や各てんかんセンターなどで行うことができ、必要に応じて紹介しています。

➂脳画像検査

てんかん以外の病気を除外したり、てんかんの原因を探ったりするためにMRIやCT検査を行います。当院はMRIがありませんので、必要な場合は大学病院や市内の脳神経外科病院などに依頼しております。

④血液検査

初診時の血液検査は、健康状態をチェックし、投薬前のデータとして重要となります。すでに薬を飲んでいる患者さんでは、薬の血中濃度や副作用をチェックする目的でも行います。抗てんかん薬開始後も、血中濃度把握と副作用のチェックのために定期的に血液検査を行います。

フローチャート図

epilepsy

てんかんの治療

てんかんの一番の問題は、発作が繰り返し起こることで患者さんや家族の生活の質(QOL)が低下してしまうことです。てんかん発作が繰り返されることで事故やケガ、小児では知的発達への影響、大人では運転ができなくなるなど、様々な面で困難をもたらします。てんかん発作を予防し、発作がない状態を維持することが治療の目標となりますが、合併する認知・行動・精神面の障害も治療の対象となります。

薬物治療

脳に過剰な興奮が起こらないように、ほとんどの場合は抗発作薬(抗てんかん薬)で治療を開始します。6-7割の患者さんは、薬物治療で発作は起こらなくなります。このとき、薬の選択には診断が正しいかどうかが重要になります。

てんかんは慢性の病気ですので、高血圧やコレステロールの薬などと同じように長期間内服する必要があります。薬の中止についてはてんかんのタイプや経過にもよりますので、患者さんの生活状況と将来を見据え相談して決定します。

外科治療

薬で発作が抑制されず、日常生活に支障がある患者さんには、病因や診断の見直しと、薬物治療以外の治療法も検討します。

外科手術で発作がよくなる可能性がある場合は、外科治療が可能な医療機関(大分大学医学部附属病院や各てんかんセンターなど)をご紹介します。

なお、緩和治療である迷走神経刺激療法(VNS)後の刺激調節は当院でも対応予定です。

また、ケトン食療法が有効な場合もあります。ただしてんかんセンターなど専門医療機関での導入が必要になります。

治療の選択に関しては、てんかんの原因や重症度だけでなく、年齢、性別、職業など生活ステージも考慮し、個別に治療を工夫します。

生活へのサポート

てんかんのある方が生活していくうえで、医療費・所得の助成や福祉サービスを受けられる場合があります。自立支援医療を用いれば外来医療費の自己負担が軽減されますし、発作が完全に抑制されていなければ、精神障害者保健福祉手帳の取得も検討できます。手帳の取得により税制上の優遇や、障害者就労や就労支援サービスの利用ができるようになります。条件を満たせば、障害年金の取得も可能です。

精神科デイケアや就労支援といった社会参加への支援は当院でも行っています。

就職や運転免許、妊娠・出産などに関する疑問もご相談ください。